スタンウェイピアノのペダルの踏み加減 [ピアノに関する知恵袋]
家庭で国産ピアノで練習されている方がコンサートホールの発表会やコンクールでスタンウェイピアノを弾く時、ペダルに違和感を感じる方がいらっしゃると思います。
わたくし達ピアノ調律師は右のダンパーペダルの調整をする時、ペダルを少し踏んで少し遊びが入るように調整している為、ペダルを踏んでもいきなりダンパーは上がりません。
逆に音を消す時、ペダルを完全に上まで戻さなくても音は消えるようになっています。
しかし、スタンウェイピアノはペダルにあまり遊びがないので、ペダルを踏むと同時にダンパーがあがります。
そのためペダルも完全に上まで戻さなければ音は消えません。
これはプロの演奏家がペダルを踏む時、音が少しだけ残るハーフペダルという双方を使用する事が多いためです。
スタンウェイピアノのペダル機構に慣れておきたい方はご自宅のピアノを調律師とご相談の上で、
ペダルに遊びがないように調整していただくことをお勧めします。
時間も1~2分で済むので、良心的な専属の調律師であれば無料でやってくれると思います。
湿気にご注意を! [ピアノに関する知恵袋]
早いもので10月に入り今年もあとわずかとなりました。
涼しくなるのはいいのですけども、台風や雨が続くとうっとうしいですね
そのせいでお客様から「ピアノの音が出ない」「音が狂ってる」というお電話が多いので修理に駆け回っています。
でも、天気が良くなれば自然と直ることも多いです。
*大城ピアノは作業場の拡張に伴い作業効率も上がりましたので展示場のピアノが増えました。
グランドピアノやアップライトピアノをお探しの方はご来訪をお待ちしております。
ピアノによくある故障 [ピアノに関する知恵袋]
以前にブログにて掲載しておりました「ピアノによくある故障」を再度皆様にご案内させていただきます。
(ご覧になってない方はご参考になれば幸いです)
雑音
ピアノは振動する物体です。
ですから当然振動によって音楽的な音とは異なる雑音も生じてきます。
その雑音の原因で一番多いのが天屋根と呼ばれるピアノの上のふたの部分についている真鍮製の長い蝶番から発生する雑音です。
これは中に芯棒との間に極僅かな隙間ができ、その部分が振動してビービーと雑音が出るからです。
雑音のポイントの発見方法は何ヵ所か指で押さえてみたらわかります。指をふれて止まればそこがポイントです。その周りの蝶番の隙間に爪楊枝を差し込めば応急処理はできます。それでも止まらなければ技術者に来て頂きましょう。
その程度の修理はいつもお願いしている技術者ならば無料でやってくれるか、せいぜい出張費程度で済みます。
その他によくある雑音
ピアノの上に置いていた硬い小物がピアノの後ろに落ち、それが響板に接してガラガラとかゴロゴロという雑音がでる場合があります。
フローリングにピアノを置いている場合はピアノ本体を自分で少しずらして取ることができます。じゅうたんや畳の上にピアノを設置している場合は技術者にお願いしましょう。
技術者なら何とか工夫して動かすことが出来ますが、運送屋さんの手を借りなければいけない場合もあります。
その時は8000~10000円くらいピアノ移動料金が発生します。
上記の内容からピアノの上にあまり物を置かない方がよろしいと思います。
ピアノ以外からの雑音の発生
前にも述べた雑音もそうですが、すべての音に反応するのではなく、数か所の音に反応するのがピアノの雑音の特徴です。(ピアノの雑音は共鳴と呼びます。)
例えば、ピアノの上に振動しやすい物体(メトロノームや筆箱)を置いている場合、その物体が共鳴して雑音として発生するのです。
又、冬場は石油ストーブや照明器具の傘などからも雑音はでます。ピアノの上からはずすとかストーブの向きを変えるなどしてこれを防ぐことができます。
ペダルを踏むとキーキー音がす
これは内部の部品と部品が接して擦る音ですから技術者にお任せするしかありません。
しかし、これは簡単に治る雑音ですから費用も余りかかりません。これも良心的な技術者でしたら無料でやってくれるはずです。
それ以外にも様々なところから雑音は発生します。
しかし、皮肉にも技術者が到着した時は雑音が治まってどこが原因なのか発見できない場合もあります。
その様なことから技術者に電話する前にまずご自分で探してみた方が良いと思います。
いろいろと長い説明になり申し訳ございませんでした。上記以外にもピアノの事でお困りのことなどございましたらお気軽にお問い合わせくださいませ。
グランドピアノ用吸音板 [ピアノに関する知恵袋]
遠方のお客様からグランドピアノ用の吸音板の作り方を教えてくださいと依頼がありました。
そこで工房にあるグランドピアノで作業工程を作成してみました。
グランドピアノの下では凄い音がしますのでこれを取り付けるとかなり静かになります。
ご興味のある方に参考になれば幸いです。
(わかりづらい点などもあるかと思いますがご了承ください)
グランドピアノ用吸音板の作り方 *ピアノに全く傷をつけない場合*
【準備するもの】
予算:約8000円~10000円(材料費5000~6000円他工具代)あくまでも目安です
材料:以下明記
材料名 | 内容(サイズなど) | 個数 | 金額 |
段ボール | 横150cm 縦100cm | 1 | あるもので摘要 |
カッターナイフ | 1 | あるもので摘要 | |
ベニヤ板[合板) | 厚さ5.5mm 横1820cm 縦910cm 横1820cmを1470cmにカットする | 1 | 約800円 |
鉛筆 | 1 | あるもので摘要 | |
のこぎり | ベニヤ板用 | 1 | 約100円 |
先の尖った細いのこぎり | ベニヤ板用 | 1 | 約800円 |
タイルカーペット | 厚さ5mm 50cm四方 | 5 | 約285円×5 |
タッピングネジ | 太さ3mm 長さ8mm | 2袋 | 約100円×2 |
力木(補強木) | 厚さ2cm 四方 長さ1m | 2 | 約100~150円×2 |
ボンド | 木工用 | 1 | 約100円 |
ネジ | 太さ3.8mm 長さ2.5~3cm | 1 | 約108円 |
ドライバー(プラス) | ネジの太さにあったもの2種類 | 2 | 中500円 小300円 |
家具転倒防止ポール | 突ぱり耐震ポールL型 | 2セット | 約2800円 |
*家庭内に工具がある方は材料費だけで済みますので6千円位で済みます。
*金額に関しましては購入店などによって価格が違いますのでご了承ください。
作業時間:素人の男性で3~4時間、買い物の時間を入れると丸一日以上。
女性では工具が理解できないものなどもあり難易度は高くなります。
【工程】
1 横147cm~150cm、縦100cmの段ボールを1枚になるように作ります
2 ピアノの裏はこのようになっています
3 ここに段ボールを当てて
4 しっかり抑えつけます
5~6 誰かに協力してもらい段ボールがはみ出た部分に鉛筆でピアノの側面から形のとおりなぞります
7 厚めのカッターナイフで型どおりに沿って切り取ります
8 このピアノの場合は鍵盤側にこのようなくぼみがありましたので図の用は型紙が出来上がりました。(くぼみのないピアノの方が多いです)
9 あらかじめホームセンターで厚さ5.5mm、横1820cm、縦約910cmのベニヤ板を横1470cmにカットしてもらいます
10~11余り綺麗でない面を表にして段ボールで型取りしたのを重ねます
12~14段ボールに沿って鉛筆で型取りします
15 真っすぐに切るベニヤ板用ののこぎりと曲線を切る専用の先のとがったなるべく細いのこぎりを準備します
16 切り取ったベニヤ板の本体はこのようになります
17 曲線になっている部分を右側にして厚さ5mm、50cm四方のタイルカーペットを貼り付けます。5枚で十分足ります
18 このようなネジを2袋準備します。サイズは3mm × 8mmのタッピングネジです
19~21 このネジでカーペットを貼り付けます。50cm × 50cmのカーペットにはネジが9本位。カーペットの面積が小さくなるにつれてネジの本数を適当に減らします
22 カーペットと板の間に板を敷きカッターではみ出したカーペットの部分を切り取ります
23 はみ出したカーペットを切り取ったら、このような形になりました。これが吸音板本体です
24 吸音板本体の反りを防ぐため力木(補強木)を取りつけます(板の太さは2cm四方がいいでしょう)
25 まずベニヤ板に接する面にボンドを付けます
26 長さ2.5cm~3cmのネジで力木(補強木)を固定します
27~28吸音板の裏側もこのように仕上がったら吸音板本体は完成です
29~30 ホームセンターで家具転倒防止のポールを4つ買います(ピアノを傷つけないためにこれを使用します
31~32カーペットの部分を上にして4本で吸音板全体を支えれば取り付け完了です
追伸:
ピアノの裏側にネジ穴を付けても良いのであればこのような取り付け方も出来ます。
http://oshiropiano.blog.so-net.ne.jp/2014-04-12(作業工程6に掲載しております)
これからピアノを始めようと思っている大人の方へ [ピアノに関する知恵袋]
ピアノと言うと敷居が高く、幼いころからやっていないと弾けない、弾いてはいけないというイメージがあるのではないでしょうか
そのような風潮によって「大人になってピアノなんて・・・・」と思う方は多いはずです。
しかし、大人からピアノを始めても意外に弾けるようになるものです。
(ここで述べる「弾ける」とは、あくまでも自身が満足できる演奏ということです。)
個人的ですが、
大人になってピアノを始める方の多くは「あの曲が」弾けるようになりたい」「あの時聴いていた音色が忘れられない」というような気持が子供よりも具体的に持っている印象がありました。
そのような方は、まず難易度は気にせずに弾けるようになりたい曲をメインに練習してみる事をお勧めします。
基礎は非常に大切ですが、基礎練習ばかり時間を割いているとやる気がなくなってしまいます。
弾きたい曲があってこそ基礎だと思います。
出来なくてもいいので好きな曲にとりかかるといいと思います。
目標も課題もより明確に見えてくるはずです。
つい口ずさんでしまう鼻歌のよう気軽にピアノを弾いて見てください。 by 大城 巳来
中古ピアノ販売と調律訪問エリア限定の理由 [ピアノに関する知恵袋]
大城ピアノではインターネットで中古ピアノ販売や仕事の情報を公開しておりますが、ネット販売とは異なります。
その違いは、ピアノ販売と調律訪問のエリアを限定していることです。
そのエリアはアフターサービスができる限界で決めています。
ピアノはお客様に買っていただけたらそれで終わりではありません!
ピアノ調律師にとってはそこからが始まりなのです。
大城ピアノはインターネット上で中古ピアノの音は流しておりません。
パソコンやスマホではまともな音は聴けないからです。
ピアノをご購入される方は、外装・内装の状態やタッチ・音質などを見て頂きたくお客様のご都合の上お越しいただいております。
*以前他店のネット販売でご購入されたお客様のピアノの調律に行ったことがあります。
外装はとてもきれいでした。 しかし、鍵盤の上面がでこぼこで深さも揃っておらず、タッチコントロールが悪く、音色も硬い状態でした。
その為、調律以外の整調・整音をしなければならず4時間以上時間がかかった事を覚えております。
工房(展示場)にお越しいただくとネットでは見えない部分が見えてくるので足を運んで頂く価値はあると思います。
実際、中古ピアノとはいえ絶対的に安い買い物ではありません。
お客様のご予算とご希望のピアノに出会い、購入後も満足して頂ける大城ピアノでありたいと思います。
中古ピアノ選びについて [ピアノに関する知恵袋]
中古ピアノのご購入をお考えの方にいくつかお伝えしたい事があります。
【ピアノの寿命について】
私の工房に新しめのピアノを求めてご来訪されるお客様が多くなりました。
その理由をお聞きしますと新品のピアノを販売している楽器店の方から「ピアノの寿命は20年」と説明を受けられたそうです。
そんなことはありません!
もし、本当にそうだとしたら中古のピアノを販売している楽器店は詐欺まがいの商売をしていることになりますね。
ピアノはよほど管理状態が悪くない限り少なくとも50年以上は保ちます。(メーカーにも左右されますが・・・・)
私は何度も製造後45年以上経過したピアノを販売しましたが何の問題もありません。
今月の5月12日にお客様宅に納品させて頂いたヤマハのNO.U3で製造後48年経過しているピアノです。
*画像はお客様の許可を頂いております。
http://oshiropiano.blog.so-net.ne.jp/2015-05-13
【中古ピアノには癖が残る?】
「中古ピアノは以前使っていた人の癖が残っているから駄目だ」と言われる事があります。
私たち技術者は「人の癖」と言わずに「経時変化」と言っています。
「経時変化」→ピアノの場合、使用頻度に比例して起こるフェルトやスキンなどの摩耗や、湿気や乾燥など環境の変化により生じる全体的なずれ。
ピアノは使用すると当然何らかの変化は起こります。
しかし、それは整調や整音という基本的な作業で修正しています。
「経時変化」は使用頻度が高い程増しますが、大城ピアノで販売している中古ピアノはフェルトやスキンなどが摩耗している場合は交換して修正しています。
そのような事を確認されてから信頼できる楽器店で購入されると良いと思います。
【ペダルの内部の材料】
以前お客様から「ペダルの内部(長さ60cmの天秤と呼ばれる部分で、シーソーみたいな動きをする部分)の材料は鉄よりも木の方がいいのですか?」と質問された事があります。
はっきり言ってそれが木でできてても鉄でできてても音質やタッチには何の影響ありません。
むしろ木よりも鉄の方がシンプルで丈夫だと思います。
私の経験上、木の方は「経時変化」により雑音がする事が多いです。
その点カワイやヤマハのペダルの天秤は鉄で作られていますので安心ですね。
ピアノの防音対策 (その後のご報告) [ピアノに関する知恵袋]
先月(4月10日)グランドピアノをご購入して頂いたm様から嬉しいニュースが入りました。
下の階の方が「全然音が聞こえないですよ!」と言われたそうです。
ピアノを置いてある部屋の真下の方からそのように言って頂けるとこれはもう本物ですね。
しかも、グランドピアノですよ
マンションの構造によって効果に差があるかもしれませんが、それでもオーラルソニックさんは凄いです!
久しぶりのすばらしいニュースでした。
m様本当にありがとうございました。
補足:前回のブログの内容が表示出来なくなってしまっております。
その為、下記に前回のブログの内容を掲載します。
4月10日カワイグランドピアノKG-3Nをお客様宅に納品致しました。
m様はマンションにお住まいでピアノの音が周りに聞こえるのを心配されていました。(とくに階下の方に)
m様は様々な工夫を考えられた結果、ピアノの下に特殊な防振架台を設置してその上にピアノを置く事になりました。
インシュレーターはゴム製のスーパーインシュ「静」にして、更に私の自家製の吸音板を取り付けました。
その結果お隣の方には気になるほどの音量ではありませんでした。
(お隣がピアノの設置場所から離れていることもありますが・…)
もし、階下の方にもあまり聞こえてないのでしたらこれも防音(正確に表現すれば減音かな?)対策の一つの方法として面白いと思います!
ピアノの下の架台はオーラルソニックという会社で、ルームクリエーターという特殊な遮音パネルの開発と製作で有名です。(福岡市の天神に会社があります)
架台の費用は15万円位で(オーラルソニック社価格)、スーパーインシュレーターは1万5千円で済みました。
ピアノの裏の吸音板の材料費は3千円位です。(大城ピアノ製作)
写真はオーラルソニック社の架台と私の自家製の吸音板です。(お客様の許可を頂いて掲載させて頂いております)
オーラルソニック社の架台です
防音板です(大城ピアノ製作)
この体験をさせていただいたm様との出会いに大変感謝しています。
ありがとうございました。
*ブログの順番がわかりにくく大変ご迷惑をおかけいたしました。